OWSを始めたきっかけ
OWSは高校3年のときにジュニアパンパシフィックでやってみたのが初めてでしたが、鹿屋体育大学へ進学してからは競泳のみでOWSはやりませんでした。 しかし大学を卒業してから競泳の記録がなかなか振るわなくなり、コーチと相談して何か新しいことを取り入れてみよう、という話になりました。
そこで、OWSを泳いでみてはどうだろう? ということになったのです。 実際に泳いでみると、それなりの結果が出ました。
2014年のころでしたが、すぐに日本代表に選ばれ、パンパシフィックに出場。 当時、ほかに有力な選手がいなかったですし、泳力だけでいえばそれなりにあったので、少し技術をつければ国際大会に出られました。 初めて出場した大きな世界大会は、2015年の世界水泳です。 思ったよりうまくいかなかった、という印象でした。
OWSの魅力、競泳との違い
競泳では長くても泳ぐ時間は約15分。400mでは約4分ですが、OWSは約2時間と非常に長いので、順位がいろいろと上下したり、試合が流動的に変わります。 その流れを読み、それを自分でコントロールしないと余計なところで体力を使って最後まで泳ぎきれません。 また集団から離れてしまうのも体力を使ってしまうので、集団の中で自分の立ち振る舞いを考えながら泳がなければなりません。
また、決定的に違うのはボディコンタクトがあること。 イメージとしては、競泳が“自分との戦い”だとすれば、OWSは対人競技の側面が強いと思います。 基本的に接触は禁止されていますが、泳いでいればどうしても周りの選手のヒジや足が当たります。 そうしたことも受け入れていかなければならない競技です。
海外の選手の接触は厳しいと思われがちですが、男子の場合は必要以上に接触されません。 ウワサによると、女子のほうが厳しいと聞きます。
ただ、やはり最後のスパートになると、みんな周りを押しのけてでも前に出る、という気持ちがあるので、どれだけ自分が有利に立てるのかいい場所の取り合いになります。 私の経験では、足を引っ張られたりすることはないので、どの選手もスポーツマンシップに則って泳いでいると思います。
海での環境やコンディションについて
試合前日に、本番と同じぐらいの時間帯で海や会場に入り、コンディションや潮の流れ、波の大きさ、日差しの位置などを確認するようにしています。 逆波や逆潮、追い潮の状態ではどのように泳ぐのか変わってきますし、波が立っているかどうかでも体の動かし方が変わります。 事前に1周のレースプランを立てて臨むようにしています。
ベストなレースプランは自分の中にありますが、OWSは対人競技で試合の流れも流動的なので、その場その場での対応力が非常に問われます。 最近になって獲得できたこの能力をしっかり生かして日本選手権に臨みたいと思っています。
東京20020へ向けて
7月の世界水泳では、対人戦として仕掛けていくポイントや、レースの読みなどが非常にうまくいきました。 このまま順調に一つひとつ、世界大会に出場して体力面と技術面の両方を成長させたい。 そして、東京オリンピックの前年にある2019年世界水泳で上位10名に入って、東京オリンピックに出場したいです。
次世代を担う若手選手へ
とにかく距離を泳いでほしい。 けれど、ただ泳ぐのではなく、しっかり考えながら泳いでほしいです。
というのも、最近になって、OWSは競泳とまったく別物だと考えるようになりました。 同じ自由形でもOWSは競泳とは別ということを理解し、どちらのためになる泳ぎなのかを考えながら泳ぐべきだと思います。
また、OWSは場数がものをいう競技でもあるので、大会の規模を問わず、積極的にレースに出て経験を積んでほしいです。
競泳とOWSを両立するよさ
OWSに出場すると、競泳が非常に短く感じます。 最初から全力で泳いでもイケるのではないか、と思える。 OWSで体力を練成したものをフォームさえ変えてしまえば、競泳に適用ができます。 逆に、競泳のラストスパートで体力的に余裕があれば、OWSでも応用できます。
私は、OWSが競泳にもたらす効果は大きいと思っています。 海で、浮力のある泳ぎやすいところで集中して10㎞も泳げば、体力面でも感覚面でも非常によいものが得られるでしょう。 OWSから競泳へのアプローチはとてもよいと思います。
競技での今後の目標
もちろん東京オリンピック出場です。 OWSでどのような技術が必要なのかをよく考え、競泳とOWSの両方での東京オリンピック出場を目標としています。
宮本 陽輔(みやもと ようすけ) 所属:自衛隊 生年月日:1990年8月23日 (2017年 第93回 日本選手権水泳競技大会 オープンウォータースイミング競技 インタビュー時)
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