自粛期間中はどのように過ごしていましたか?
2月のドーハでの試合中に肋骨を骨折して、その治療期間が約4 ヶ月間かかり、自粛期間と重なる形でした。
完治したのが6月中旬で、そこから本格的にトレーニングを再開しましたが、それまでは足の強化(キック練習とバイク)しかできませんでした。
時間的にも普段より余裕ができたのでさまざまなジャンルの本を読んだり、試合の動画を見直したりと、色々な方向から競技に向き合うことができました。
自粛期間中は何を思っていましたか?
自由に泳ぐことが許されない雰囲気の中で、スポーツとは、自分の健康と周りの安全な環境があって成り立つんだと、改めて実感しました。
ですから、スポーツを通じて自分ができること、スポーツの価値など考えながら過ごしていました。
東京オリンピックの延期を経て、トレーニング再開時に思ったことは?
肋骨の完治とトレーニングが本格的に再開できる時期がほぼ同時でしたので、そこは不幸中の幸いでした。
怪我がなく純粋に延期だけ知らされていたら、精神的にキツかったかもしれません。
今はさらに1年間の準備期間ができたと思い、とても前向きに捉えています。
東京オリンピックへの意気込みをお願いします。
正直、来年のオリンピックが引退レースになれたら最高だと思っています。
仮に最終選考会で東京オリンピックの道が途絶える結果になったとしても、それまでの準備が万端で、自分の力を出し切った結果なのであれば納得はできると思います。
引退を考えた時期は何度もありましたが、東京オリンピックにどう関わりたいかと改めて考えた時に、選手として自国開催のオリピックを肌で感じたいという気持ちが強く、ここまで続けています。
オリンピックが人々に与える影響はとても大きいと思っています。
私は 1992年のバルセロナオリンピックの岩崎恭子さんのレースをテレビで見てオリンピックに出たいと思うようになりました。
東京ではたくさんの方々の記憶に残るレースがしたいです。
日本選手権への意気込みは?
自分の中では最後の日本選手権だと思っています。
去年も同じことを言っていましたが…(笑)
2月のドーハでの試合以降、今まで全く試合がなく、淡々とトレーニングを続けるのみでした。
だから単純に試合ができることは嬉しいです。
今回の日本選手権は、来年を見据えてレースをどう泳ごうかということだけに集中できます。
レースの時に大事にしていることを何ですか?
(1)レース前の準備や対策をしっかりして不安要素をなくしておくこと
(2)レース中は臨機応変に
(3)勝負どころを見極める、の 3点です。
このうち、(2)と(3)は普段のプールでのトレーニングでは強化できないので、そこはやはり試合の実践経験が必要になります。
試合中、最初の1周でその日のコースコンディション(海況)を確認し、泳ぎながら組み立てています。
試合経験を積んでいくと、「あ、ここでレースが動くな」と泳ぎながら分かるようになります。
自分から仕掛ける時はラストどのあたりからか、周りの選手の状況はどうかなどを、その場で泳ぎながら判断することが大切です。
レースは2時間続くので、その中での体力温存やレース変化への対応力も常に考えています。
プールのトレーニングではできない、実戦の中でしか培えない経験が大切になる競技だと思います。
次世代の選手たちへ最後に一言お願いします。
次世代の OWS界を担う日本の若手選手たちには、「代表になれればいい」ではなく、「どうやって世界と戦うか」を常に頭に描きながら、たくさんの経験をして、競技に真摯に向き合い、今後の OWS界を牽引してほしいと思っています。
貴田 裕美
所属:コナミスポーツ
生年月日:1985年6月30日
(2020年 第96回 日本選手権水泳競技大会オープンウォータースイミング競技大会(中止)パンフレットより抜粋)
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